病院の窓枠サッシに発生する結露と微生物との関係について(その1)
冬季や春先に窓枠サッシなどに発生する結露の影響で微生物(特にカビ)が繁殖している状況はよく目にする光景であるが、一般家庭だけでなく病院でも同じ状況が見られている。身体の弱った患者さん(易感染患者)がいる病院では院内感染(日和見感染)の問題があり、微生物が繁殖する環境は重大な問題である。
病院内で結露の発生した窓枠サッシ周辺に存在する微生物について検査を実施したので報告する。
その結果、結露が発生した病室などの窓枠サッシには、種々の微生物、すなわち、細菌類及び真菌類(カビ及び酵母など)が多量(約106~107CFU/約100cm2)、かつ広範囲に存在することが確認された(下図)。視覚的にも黒変が確認され、カビの存在が明らかであったサッシ部分や、黒変が確認されなかったサッシ部分においても多量の微生物が検出された。
検出菌種として、細菌では、S. paucimobilisやP. fluorescens,B.cepacia のグラム陰性桿菌が、また真菌では、Cladosporium 属のカビや
Aureobasidium 属の酵母が主な優占種として確認された。これらの菌種は、いずれも高湿度環境下を好む特徴を有する微生物であり、日和見感染
の原因菌(呼吸器系のアレルギーの原因となる真菌類など)も含まれているため、結露対策は、易感染患者などが多数存在する病院において院内
感染対策上非常に問題であると考えられた。
病院においても結露などの湿気を原因として窓枠サッシ周辺で微生物の繁殖が助長されているとの結果から、結露の発生を防ぐための環境管理
対策、すなわち施設及び設備的な対策の実施が院内感染対策上必要と考えられる。
現在、結露を発生し難いとされる窓枠サッシについて、その効果を検討中である。
参照:「病院の窓枠サッシに発生する結露と微生物に関する基礎的調査検討」、第39回日本防菌防黴学会(東京)2012年の資料抜粋